【マリオ64 RTA】なぜNINTENDO64とVirtual Consoleの記録集が分けられているのか

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スーパーマリオ64RTAの主要カテゴリでは、NINTENDO64(以下実機と呼びます)の記録とVirtual Console(以下VCと呼びます)の記録が分けられています。

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引用元: Super Mario 64 – speedrun.com

ゲームタイトルによっては実機とVCが分けられていないものもあるので、他ゲーRTAからマリオ64RTAを知った人は「どうして分けられているんだろう」と思ったかもしれません。

こんな疑問を思った、普段マリオ64RTAをしない・見ない方のために、なぜマリオ64RTAでは実機とVCで記録集が分けられているのかを説明します。

基本事項

マリオ64のVCは、日本と海外(USA)で配信されているROMが異なります。

  • 日本VCは日本版v1.3(振動版)
  • 海外(USA)VCはU版

ご存じのように、日本版v1.3はBLJ(ケツワープ)が使えないのとロード時間が少しだけ長いので、RTAで日本VCを使う人はほぼいません。

しかし、海外VCはBLJが使えるしロード時間も死ぬほど速いので、「マリオ64RTAでVCを使う」という言葉は基本的にこちらを指すことになります。

今回はこの2つを区別して説明します。

大きい理由は3つ

本トピックの重要なポイントは『実機とVCの違い』です。

RTAにおける両者の違いは細かいレベルで見ると数多くありますが、細かいのを無視すると大きい違いが3つあります。

  1. ロード時間が違うこと
  2. 処理落ち量が違うこと
  3. VCで使われているエミュレータの再現度が100%ではないこと

上記3点はインパクトがかなり大きく、それがゆえにカテゴリが分けられています。

1. ロード時間が違うこと

ここでいうロード時間とは、現ステージから別ステージへまたぐ時に行なわれるロード処理の時間のことです。

例えば、

  • ボム兵の戦場(ステージ)の絵に入り、スターセレクト画面が表示されるまで
  • ボム兵の戦場のスターを取った後、暗転して城内に戻ってくるまで

などのことを指します。

なぜここが大きい差なのかというと、1RTAの中でロード処理の頻度は、短距離カテゴリでも数十回、長距離カテゴリならば数百回あるからです。

例. 120枚RTAの場合

  • 300回前後のロード処理 = 各6枚(100枚含)スター × 15ステージ × (ステージin(2) + out(1)) × シークレットステージなど
  • ロードの種類によって何秒差があるかが異なるため、「1ロード処理を〇秒と仮定して × 300回」みたいな計算で差を算出することはできません。

日本版v1.3(振動版)は、v1.0(初期版)と比べてロード時間が少しだけ長いので、それを配信した日本VCは実機v1.0と比べるとむしろ総ロード時間が長くなると考えられます。

問題なのは海外VCです。以下が有志による比較になります。

70枚RTAでの比較

120枚RTAでの比較

この動画は100%正確ではないと思いますが、70枚RTAで約51秒、120枚RTAで約105秒、実機より海外VCのほうが速いようです。

各カテゴリにおいてこの差は非常に大きく、この事実だけで「記録集を分けないとダメ」と思うマリオ64RTAプレイヤーが大半です。

処理落ち量が違うこと

マリオ64RTA(実機)においては、どのスターにおいても処理落ちという概念が付きまとってきます。

処理落ちが多いほどリアルタイムが遅くなってしまうので、「処理落ちをどのように回避するか」という点もマリオ64RTAの大きい要素となっているのですが……。

日本VC&海外VCでは処理落ちが無いので「処理落ちを回避する」という概念を無視できてしまうのです。

以下で分かりやすい例を2つ挙げます。

かいぞくのいりえ

このステージは最初正面を向きっぱなしだと処理落ちがあるので、右or左から見るカメラを使って処理落ちを回避するのが一般的です。

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実機の場合、カメラを変える分入力が若干複雑になる上、進んでいる先が見えにくいのでミスしやすく&最適化しにくくなります。

一方VCでは、ここで処理落ちしないので、何も考えずに真っすぐ進むだけで良いのです。

VC参考動画: https://youtu.be/xh36mOeMqcI?t=440

テレサのホラーハウス

このステージは最初お屋敷に入るまでに処理落ちが存在します。

特にお屋敷のドアを開けるところの処理落ちが多いので、右から見るカメラを使って処理落ち軽減するのが一般的です。

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ここもかいぞくのいりえと同じで、カメラを変える分入力が若干複雑になるのでお屋敷に入るまでにロスりやすいです。

一方VCでは、ここで処理落ちしないので、何も考えずに真っすぐ進むだけで良いのです。

VC参考動画: https://youtu.be/xh36mOeMqcI?t=3092

処理落ち回避はもっとたくさんある!

今回は代表的な処理落ち回避を紹介しましたが、この他にも細かいところ含めて100個以上の処理落ち回避が存在します。

VCを使えばこれらの知識を知らなくても速いタイムを出すことができるので、もはや別ゲーなのです。

ちなみに、処理落ち回避は以下のサイトに9割ぐらいまとまっているので、これを見ればマリオ64RTAにたくさんの処理落ち回避があることが分かると思います。

VCで使われているエミュレータの再現度が100%ではないこと

これは先に挙げた2つと比べるとしょぼいポイントに見えるかもしれませんが、オリジナルを尊重するマリオ64RTAプレイヤーにとってはとても大きなポイントとなっています。

2018年の話になりますが、『ほのおのうみのクッパ』というステージで足場が上に上がっていく現象が見られました。

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引用元: Bowser in the Fire Sea with Red Coins 0x A Presses (Wii VC Only) – YouTube

この現象はVCでのみ発生し、簡単に言うと、画像の足場の演算処理の一部が実機とは異なるためにゲームを放置するだけで上に上がってしまう現象となります。

この他にも、エミュレータで作ったマリオ64のTASを実機で流すと正常に再生できるのですが、VCで流すと上記と同じ理由で同期ズレ(desync)してしまったり、(右がVC)

クッパを倒した後クッパがカギになるパートが実機より2フレーム速いため、カギ取得までVCのほうが2フレーム速くなったりします。(右がVC)

このようにマリオ64におけるVCは実機を100%再現できていません

なので、オリジナルを尊重するプレイヤーから見ると、「カジュアルプレイならVCでもいいけど、本格的にRTAするのにVCを使うのはちょっとな…」となるのです。

むすび

今回の記事をしっかり読んだあなたは、記事タイトルに対する答えが分かったと思います。

マリオ64RTAにおいてエミュレータを使うことやVCを使うことは過去に問題視され、たくさんの議論がありました。

最終的にはそれぞれの意見を尊重しプラットフォーム毎に記録集を分けることで落ち着きました。

こういった背景がありますので、おそらく、将来的にも記録集を統合するというのは無いと思います。