【マリオ64 RTA】16枚RTA通常ルートでWF100赤チャートがついに実用化された件

トピック16枚RTA

2020年3月28日。

KANNO氏により、16枚RTAの通常ルートの世界記録が更新された。

この記録の動画を確認してみたところ、今までネタだと思われていた『バッタンキングのとりで 100枚赤コインチャート』(以下、WF100赤チャート)が使われていたのだ!

今回は、WF100赤チャートとは何なのか・なぜネタだと思われていたのかを話すと共に、理論上どの程度タイム短縮できるのかも話そう。

WF100赤チャートとは?

WF100赤チャートとは、16枚RTAの通常ルートにて極限まで詰めると速い『WF100赤』を回収するチャートのことだ。

『WF100赤』を回収する代わりに『WFのバッタンキングスター+てっぺんスターを外す』もしくは『CCMの2スターを外す』のが普通である。

このチャートのルーツは、2013年頃に発案されたCCMスキップチャート。

『CCMの2スター』を『BoB空島スター+WF赤コインスター』に変更する案で、案のほうが4.2秒ほど遅い結果となっている。

この結果から、当時は「CCMをスキップするのはさすがにネタだろう」と思われていた。

しかし、月日は経ち5年後の2018年9月頃――皆がすっかり忘れた頃にWF100赤を回収する案が現れたのだ。

新たに出たWF100赤チャートもやっぱりネタ

初めて出たWF100赤チャート案は『WFのバッタンキングスター+てっぺんスター』を『WF100赤』に変更する案だった。

『WF100赤』のほうが約2秒ほど速い結果となっている。

これだけ見ると良さそうに見えるのだが……、当時はこの改善案すらもネタ扱いされていた。

その理由は、WF100赤の難易度に対してのリターンが少ないことにあった。

上記の比較動画は理想的な動きでの比較であり、左側の動画のWF100赤は56.70秒。

しかし、実際のRTAでは、動きの最適化やパックンの青コインの乱数の関係で1分を切るぐらいが普通だと言われていた。

つまりは、

  • 理想値56.70秒で比較した場合に約2秒速くなる。
  • 実際のRTAだと1分切るぐらいなので、少し速いか同じぐらいのタイムになってしまう。

という感じだったので、難易度に対してリターンが少なすぎると考えられていたわけだ。

人間ができる限界のWF100赤ルートが更新される

先に挙げた比較動画では、灰色の坂スタートのWF100赤ルートが使われていたと思う。

このルートは人間が限界を突き詰めた結果得られたルートであり、「これ以上はもう無理だろう」というのが一般的な見解だった。

wf100reds-for-16star-nolblj-1

しかし、2018年末、ワンスターのWF100枚ルートをヒントに、もっと速い『茶色の坂スタートのWF100赤ルート』を試すプレイヤーが現れたのだ。

『茶色の坂スタートのWF100赤ルート』とは、灰色の坂の下にある茶色の坂からスタートするルートである。

wf100reds-for-16star-nolblj-2

灰色の坂スタートと比べ、固定周期で動いている棒リフトに到着するまでにより多くのコインを回収するのが特徴だ。

最速の棒リフトの周期に乗るまでの難易度が跳ね上がるものの、棒リフト以降のコインの回収を減らせる分、速いタイムが出るルートとなっている。

wf100reds-for-16star-nolblj-3

このルートのルーツは2015年にワンスター向けに発案されたルートであり、2016年のワンスターでは既にそのルートが使われていた。

「ワンスターで茶色の坂スタートだったので、100赤でも同じことができるのではないか」となって、実際に2018年末にセーブステート有りで試されたわけだ。

この試行により、

  • RTAでも茶色の坂スタートができるのでは?
  • 茶色の坂スタートであれば、実際のRTAでも(遅くても)58秒台を出すことができるだろう。
  • つまり、実際の16枚RTA通常ルートの通しで考えても、タイムが速くなると予想できる。

という考察が成され、WF100赤チャート案が現実味を帯びてきた

そして、2020年になりこのチャートが実用化され、世界記録で使われるまでになったのである。

現在は理想上の比較で何秒差になる?

現状は、

  • CCM2枚をWF100赤へ変更
  • WFバッタンキング+てっぺんをWF100赤へ変更

の2パターンが存在する。

このうち、『CCM2枚をWF100赤へ変更』パターンが今回更新された世界記録で使われていて、現在は理想値で2.5秒速くなることが分かっている。

『WFバッタンキング+てっぺんをWF100赤へ変更』のほうは比較動画が無いが、以下から2.7秒(= 2+1-0.3)の差になると予想される。

  • 初めて出たWF100赤チャート案の比較が約2秒差
  • 新WF100赤ルートでマイナス1秒
  • WFバッタンキング+てっぺんは両方合わせて0.3秒更新されている

ただ、これは理想値での比較なので、実際のRTAに当てはめた場合の考察は別の機会に行なおうと思っている。

むすび

2000年代からお馴染みの16枚RTAの通常ルートがここまで進化していることに驚きを隠せなかったので、思わず記事を書いてしまった。

上位プレイヤーのスキルが上がるにつれ、不可能・ネタだと言われていたものが当たり前になっていく。

――こういう変化は、当たり前のルート(アプローチ)を常に疑っているからこそ生まれるのだと改めて実感したのが今回の出来事であった。