【マリオ64 RTA】SSL ジャンゴマスターが速いタイムの出し方を語る

考察あっちっちさばく

マリオ64RTAには、大きく分けると2種類のスターがある。

  1. とにかく速く動けば速いタイムが出るスター(調べるのは簡単)
  2. どうやれば速くなるのか見当がつかないスター(調べるのがめんどくさい)

あっちっちさばくいたずらハゲたかジャンゴ(以下ジャンゴスター)は、16枚RTAで採用されるほど短い時間(16秒前後)で取れるため比較的簡単なスターなのだが、コンマ数秒まで詰めようとすると激ムズスターに変貌を遂げる。

なぜ激ムズなのかというと、ジャンゴの周期など、考慮しなければならない要素があるせいで、2.のほうのスターに該当するからである。

今回は、激ムズスターであるジャンゴスターをマスターしたい人に向けて、70枚idealrunでの試行錯誤の結果を、考えた順番に話そうと思う。

今回の話の前提

まずは前提の確認から。

(1) 70枚idealrunで選択したルートは?

ジャンゴスターはプロペラヘイホーを踏むまでのパートで複数のアプローチが存在する。

RTAルートのタイムが載っているultimate sheetでは、プロペラヘイホーを使わないルートを除き以下3種類が載っている。

最近は[3]のルートを試す人が増えてきたので、70枚idealrunではこれを採用することに決めた。よって、本記事では[3]のルートでの話になる。

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[1] ダイブ2回 → 柱の正面を登って幅跳び
[2] ダイブ2回 or 慣性一段ジャンプ1回ダイブ1回 → 柱の左から登って幅跳び
[3] 慣性一段ジャンプ2回 → 柱の正面を登って幅跳び

(2) 必須テクニック『慣性残し』

このスターをやる際には、絶対に知っていなければならないテクニックが1つ存在する。

それは『プロペラヘイホーを踏む時にスティックをニュートラルにし慣性を残すテクニック』である。

このテクニックは上位プレイヤーなら常識のテクニックなのだが、たまに知らない人がいたりする。

詳しくは『基本テクニック』の『ヘイホー・ふわふわ慣性残し』を読んでほしい。

今回はどこの話をするのか

ジャンゴスターは以下2つのパートに分けることができる。

  1. 最初~ピラミッドの上(5枚コイン列付近)に着地するまで
  2. ピラミッドに着地してからスターを取得するまで

どちらのパートも速いタイムを出すためのポイントが存在する。

しかし、2.のパートはポイントはあれどとにかく速く動けば問題ないので、より速いタイムを出すために意識するべきは1.のパートとなる。

今回は1.のパートのみを話していく。

『ヘイホーを踏むまでのタイム』と『ジャンゴに当たる位置』の関係

ジャンゴの動きは固定であり、(ジャンゴスターをやっている時、)ジャンゴはおおよそ以下の軌道を通る。

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普段からこのスターをやっている人なら分かっていると思うが、ヘイホーを速く踏みすぎた場合(速く進みすぎた場合)、ジャンゴがかなり手前の位置にいる。

以下の画像でいうと青色のバツ印付近でジャンゴにぶつかることになる。

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逆に、ヘイホーを遅く踏んだ場合は、以下の紫色のバツ印付近でジャンゴにぶつかる。

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これらのバツ印をベースにマリオの軌道を描くと、あるひとつの事実が分かる。

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その事実とは……『ヘイホーを早く踏むとその分ヘイホーを踏んだ後の移動距離が増える』という事実である。

移動距離が増えるということは、その分時間がかかると予想できる。

先のセクションを踏まえて

先のセクションで話した関係は、ある程度マリオ64RTAをやっているプレイヤー諸君なら直感で理解していることだと思う。

70枚idealrunを作る前、私はこの関係をなんとなく理解していたのだが、「じゃあどういう条件だと速いタイムが出せるの?」と聞かれたら、答えることができない程度にはニワカだった。

そんな私が「こういう条件なら速いタイムが出せるはずだよ」と言える現在の私になるまでの道のりを、次のセクションから語る。

どうやれば速くなるのか予想してみる

私はジャンゴスターを作る前、以下の2説を予想した。

  • とにかく速くヘイホーを踏めばそれだけ速くなる説(以下、周期無関係説)
  • ジャンゴの周期的にヘイホーを一定以上のタイムで踏めていれば最速タイムが出せる説(以下、周期関係説)

周期関係説は先ほど述べたジャンゴの位置との関係から導き出した予想となっている。

私はこの予想をした後、以下の手順で実験を行なった。

実験1. ヘイホーを最速で踏めるアプローチを使用してピラミッド着地までのタイムを見る
実験2. ヘイホーを二番目に速く踏めるアプローチを使用してピラミッド着地までのタイムを見る
比較. 実験1と実験2を比較して差が無ければ周期関係説が正解、差があれば周期無関係説が正解

実験1. ヘイホー踏む6.10秒 → 着地12.36秒

実験1では最近流行りの『慣性一段ジャンプ2回』ルートを見てみた。

以下のサンプルは70枚idealrunのものだが、実際は適当にタスを作成してタイムを確認した。

  • プロペラヘイホーを踏んだタイム: 6.10秒
  • ピラミッドに着地して動き出したタイム: 12.36秒

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実験2. ヘイホー踏む6.40秒 → 着地12.56秒

実験2では『慣性一段ジャンプ1回ダイブ復帰』ルートを見てみた。

以下のサンプルは16枚idealrunのものである。

  • プロペラヘイホーを踏んだタイム: 6.40秒
  • ピラミッドに着地して動き出したタイム: 12.56秒

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比較. 周期無関係説が濃厚かと思いきや……

ヘイホーを踏んでから着地までの差は0.1秒なのに対し、ピラミット着地時のタイム差は0.2秒。

実験1: 12.36 – 6.10 = 6.26
実験2: 12.56 – 6.40 = 6.16

つまり、ヘイホーを早く踏むほど(空中時間を考慮しても)ピラミッド到着までも速くなるということになり、これだけを見ると、周期無関係説が正解のように見える。

私はこの実験の後、「とにかく速く踏めばいいんだな」と思いながらタスの作成を始めた。

しかし、作っている途中で『同じタイムでプロペラヘイホーを踏み、同じタイムでジャンゴに当たったのに、ピラミッド着地のタイムが違う』という事象に出くわしたのである。

結論を先に述べると、今まで考えてきた予想や実験は全くもって見当違いだったのだ。

実はこのスターは、私が考えていた以上にシンプルなスターだったのである。(深く考えすぎだった)

【結論】どうやれば速いタイムを出せるのか

ジャンゴと格闘して数時間が経ち、『どうやればピラミッド着地までで速いタイムを出せるのか』が見えてきた。その条件は以下である。

(1) プロペラヘイホーを最速で踏む、且つ、低い位置で踏む
(2) プロペラヘイホーを踏んでからピラミッド着地までの間、Aボタンを押さない

私がこの結論に一発でたどり着けなかった理由は、あるひとつの仕様を見逃していたせいである。

その仕様というのは『ヘイホーを踏んでから地面に着地するまでのタイムは、どんな軌道を描いたとしても、Aボタンを押さない限り同じタイムである』という仕様である。(同じ高さの地面に着地した場合の話)

意味が分からない人のために、この仕様を簡単に説明する。例えば、以下のように7.93秒でヘイホーを踏んだとする。

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この時、下の砂場に着地して歩き出す初フレームは、同じ高さの砂場ならば、どんな軌道を描いたとしても14.00秒となる。

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これはマリオが回転している間Aボタンを押さなかった場合なので、Aボタンをちょっと(3フレームほど)でも押すと、下の砂場で歩き始めるタイムに1フレーム以上のロスが発生する。

この仕様から、無駄な空中時間を極力なくすため(速いタイムを出すため)に『Aボタンを押さない』という(2)の条件が必要となるわけだ。

また、この仕様を理解していれば(1)の条件もすぐに理解できると思う。

Aボタンを押さなかった場合、ヘイホーを踏んでから着地するまでのタイムは『ヘイホーを踏んだ時の高さ』と『着地する地面の高さ』に依存する。

ジャンゴスターでは5枚コイン列の足場に着地する、つまり『着地する地面の高さ』は常に一定なので、『ヘイホーを踏んだ時の高さ』のみがタイムに影響してくる。

ゆえに、より低い位置でヘイホーを踏むことで空中にいる時間を減らすことができるということになる。

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【実践編】どうやれば速いタイムを出せるのか

以下の3つのポイントを意識するべきだと考えている。

(1) ヘイホーを低い位置で最速で踏みつつ
(2) ジャンゴにちゃんと当たることができて
(3) Aボタンを押さなくても5枚コイン列の足場に着地することができる

以降で1項目ずつ説明しよう。

(1) ヘイホーを低い位置で最速で踏みつつ

70枚idealrunから、一番速いと思われる『慣性一段ジャンプ2回』ルートで低い位置でヘイホーを踏んだとしても、ギリギリ5枚コイン列に着地することができることが分かる。

一般的にヘイホーはマリオが近づいてくるとそれに気づいて上に上がろうとする場合があるが、そのパターンにならないほうが良いわけだ。

70枚idealrunの場合、幅跳びを出した直後に無理やり右入力を入れている。この入力によってヘイホーが赤丸の位置から動かなくなるので、低い位置で踏むことができている。

この入力は100%有効か不明(乱数の問題かも?)だが、試してみる価値はあると思う。

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(2) ジャンゴにちゃんと当たることができて

これは言葉の通りである。

ラインを攻めすぎてジャンゴに当たることができなかったら元も子も無いので、それは避けなければならない。

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(3) Aボタンを押さなくても5枚コイン列の足場に着地することができる

70枚idealrun作成中、ジャンゴに当たってからピラミッドに着地するパートでめちゃくちゃ苦戦した。数時間に及ぶ激闘の末にひとつ発見があったのでそれを話す。

私は最初「ジャンゴに当たる少し前の段階でスティック倒しちゃってる(慣性がなくなっている)んだから、ジャンゴに当たった後もスティック倒しっぱなしでいいでしょ」と安易に考えていた。

しかし実際は、ジャンゴに当たった後に再度スティックをニュートラルに戻すことで、数フレーム分飛距離を伸ばすことができたのである。

なぜ飛距離を伸ばすことができたのかは各スティックの状態におけるマリオの速度にヒントがある。

  1. スティック倒しっぱなし: 1フレーム毎に速度30と速度31を繰り返す。
  2. スティックをニュートラルにする: ニュートラルにした瞬間の速度が維持される。

つまり、速度31の時にニュートラルにすると速度31が維持され、飛距離が伸びたのだ。

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以下は16枚idealrunの一部をgif化したものだが、マリオの速度(スター枚数)を見ると速度30と31を繰り返している(1.)のが分かるだろう。

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一方70枚idealrunは、スティックをニュートラルにしているおかげで、ジャンゴに当たった後のマリオの速度が31固定(残機カウンター)となっている。

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上記発見から、RTAでは以下の方法がベストなのではないかと考えている。(マリオの速度の値が見れなかったとしても)

  • ジャンゴに当たる前の段階で5枚コイン列のほうへ進行方向を向ける
  • ジャンゴに当たった後はしばらくスティックニュートラル

もし速度が30の状態で維持されてしまった場合は飛距離が伸びないと思うので、Aボタンを押して飛距離を伸ばせば良いだろう。

むすび

この記事を読み切り理解したあなたは、ジャンゴマスター(仮)を名乗っても良いと思う。

ただ、今回語った内容は『慣性一段ジャンプ2回』ルートでの話なので、『別のルートの場合はこの方法ではダメな可能性がある』ということは留意しておいてほしい。