【マリオ64 RTA】2015年の『伝説のアイデア』がついに達成された件

トピックチックタックロック,ワンスターRTA,世界記録

2019年3月7日。

チックタックロック 00ふんのあかコイン』の『ワンスターRTA』の世界記録が更新された。

プレイヤーはLyfey氏で、タイムは11.97秒。

この更新は最適化による更新ではなく、ルート変更による更新となっている。

で、そのルートというのが、私が2015年にアップした『伝説のワンスタールート案』(以下、伝説のアイデア)の改良版なのだ。

今回は、どうして伝説だったのか、なぜLyfey氏が伝説のアイデアを通すことができたのかを語っていく。

伝説のアイデアとは

私が2015年にアップした伝説のアイデアは『All ideas 2015 by circumark994 – YouTube』に含まれている。

まずは流れを見ていこう。

(1) 幅跳びを2回出して壁キック

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(2) ダイブを出して足場の真ん中で復帰

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(3) 少し手前に歩いて反転壁キック

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(4) 上の足場に乗った後ジャンプキックで赤コインを回収

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(5) 赤6枚目後足場に着地して幅跳び

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(6) 最後の足場で滑ってジャンプ

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以上の過程から、12.16秒スタータッチというタイムが出ている。

マリオ64に詳しい人なら気づいたと思うが、(1)~(3)は120枚TASとほとんど同じアプローチだ。

つまり、このルートは、120枚TASの前半の動きに、人間でできそうな後半のアプローチを繋げ合わせたものになっているわけだ。

このアイデアにおいて最も重要な点が『仕掛けの最速周期に乗っている点』だ。

チックタックロックは仕掛け速度"高速"で入場すると、仕掛けが固定周期で高速に動く状態になる。

で、どの仕掛けの周期に乗れるかで大幅にタイムが変わるのだが、このアイデアは120枚TASと同じ『赤コイン2枚目で足場が縦になる周期』(最速周期)に乗っているのだ。

だから、12秒台というかなり速いタイムが出ているのである。

どうして伝説だったのか

当時の世界記録は13秒台で、『伝説のアイデア』は、最速周期に乗れさえすれば12秒台は確実だった。

――つまりは、通せさえすれば世界記録だったのだ。

しかしながら、当時、誰ひとりとしてこのアイデアを通すことはできなかった。前半の難易度があまりにも高すぎたからである。

具体的には、最初の壁キック後のダイブ復帰→反転が高難易度パートだ。以降のサブセクションで見ていこう。

ダイブ復帰パート

伝説のアイデアでは、仕掛けの真ん中(赤丸の位置)でダイブ復帰している。

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仕掛けの真ん中は、以下の画像のような感じで少し山になっているので、その他の部分と若干判定が異なる。

なので、例え足場が斜めになっていた(ダイブ復帰できない角度)としても、ダイブ復帰できるのである。

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では、「もっと早く進んで青丸の位置でダイブ復帰できないのか?」というと、実はそれも可能である。

実際に120枚TASでは、青丸の位置でダイブ復帰をしている。(画像は120枚TASの動画から)

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ただ、TASと人間では最適化のレベルが違うこともあり、人間がこれを狙ったとしても難しいと思う。(試していないので分からない)

人間がやることを想定して『足場の真ん中でダイブ復帰している』と思ってほしい。

ここまではなんとか人間でもできる範囲なのだが……、問題がここから先だ。

反転パート

仕掛けの真ん中でダイブ復帰した後、伝説のアイデアでは、少し手前に歩くようにして反転を出している。

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簡単に見えるかもしれないが、実は、このパートが死ぬほど難易度が高いパートなのだ!

……このスターをやったことがない方向けに、その難易度を詳しく説明しよう。

この細い足場で反転を出すためには、細い足場に2フレームいる必要がある。(1フレームだけだと反転を溜めるアクションを出そうとした時に落ちてしまう)

伝説のアイデアや120枚TASでは、以下がその2フレームとなる。

■伝説のアイデア

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■120枚TAS(画像は120枚TASの動画から)

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伝説のアイデア(仕掛けの真ん中でダイブ復帰した場合)をよく見てほしい。

以下のような感じで、手前側に歩いていてから反転を出していることが分かるだろう。(青いライン取り)

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伝説のアイデアのやり方では、速度が付きすぎて、真っすぐ進むのだと『細い足場の2フレーム』を作れないのだ。

だから、わざと手前側に歩き、細い足場にいるフレームを増やそうとしているのである。

この操作が、高難易度を生み出す要因となっていた。

まとめ

先で話した2パートは各々が難易度が高い上、それを流れで決めないといけないため、超高難易度と化していた。

この難易度のせいで誰も通せずに『伝説のアイデア』となっていたのだ。

改良することで達成したLyfey氏

ここまでの話から、『伝説のアイデア』の難しさは十分理解できたと思う。

4年もの間誰も達成できなかったこのアイデアだったが、Lyfey氏による改良と試行によって、ついに成功させるに至ったのだ。

その改良点とは、最初の壁キック後にある。

同氏の動画を見ると、壁を蹴った後、ダイブを出さずにそのまま細い足場に向かっているのが分かるだろう。(画像は同氏の動画から)

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ダイブを出さないことで、マリオの速度が付きすぎなくなり、真っすぐ進むのでも反転を出す猶予(2フレーム)を作ることができるのだ。

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今初めてこの改良点を知った人の中には「たったそれだけ!?」と驚いている人もいるかもしれない。

でも、こういう「言われればたしかにそうだ」となる話はマリオ64では日常茶飯事で、なかなか気づかないものなのだ。

私はこの改良を見た時、「あ~なるほどね」とつい口に漏らすほど、納得させられた覚えがある。

同氏は後半パートで速いアプローチを使っており、「理想的には11.94秒まで出る」と話していた。

現状は11.97秒なので、全く同じルート・アプローチでも、あと1フレーム更新できるということになる。

興味の湧いた方は、チャレンジしてみても良いかもしれない。

むすび

『人間が伝説のアイデアを成功させた』というのが、私の中では重大なニュースだったので、記事を書いてみたのだが、いかがだっただろうか。

この話のように、ワンスターRTAでは、(難易度問わず)速くなるアイデアならチャレンジャーが出てくるのが特徴だ。

皆もぜひ『超高難易度だけど決めれば世界記録』のようなロマンのあるルート・アプローチを生み出してみてほしい。

そういったアイデアは、特にワンスターを専門にしているプレイヤーが死ぬほど喜んでくれると思う。