【マリオ64 RTA】なぜ『TTM100枚サルルート』は幻なのか?

考察たかいたかいマウンテン

あなたは、"幻"の『たかいたかいマウンテン(TTM) 100枚サルルート』をご存じだろうか。

現在の120枚RTAのTTMは、100枚スター+赤コインの組合せだが、一昔前は100枚スター+サルというルート(組合せ)も存在した。

以下は『スーパーマリオ64 TAS記録保管庫』のTTM100枚のリストであるが、ここに100枚サルルートが載っているのが分かる。(動画は削除されている)

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引用元: たかいたかいマウンテン – スーパーマリオ64 TAS記録保管庫 – アットウィキ

現在、このルートは遅いために使われていないのだが……、しかし、とある理由で"幻"のルートなのである!

今回は"幻"の意味を明らかにしていくとともに、作ってみた案の話をする。

RTAに有用なものではないので、気楽に読んでほしい。

100枚サルがどれぐらい遅いのかを調べてみる

色々話すために、まずは『100サルがどれぐらい遅いのか』を調べてみよう。

現行ルート(100枚赤)と100枚サルを比較したのが以下の表だ。(タイムはidealrunから)

組合せ 総合タイム 100枚+α 単体
100枚赤+サル 126.50秒 92.80秒 33.70秒
100枚サル+赤 ???秒 ???秒 22.70秒

『126.50 – 22.70 = 103.80』より、「100枚サルで103.80IGTが出れば現行ルートと同等」ということが分かるだろう。

103.80がどれぐらいのタイムなのかを知るため、私が2013年頃にアップした100枚サル案を見てみた。

  • 案1: 122.48IGT (124.78 – 2.3)
  • 案2: 115.76IGT (118.06 – 2.3)

※動画はTASファイルでのタイムなので、IGTに変換するために、スライダーイン時に少しだけ止まる分(2.3)を引いている。

速いほうの案2だったとしても、103.80とは12秒程度の差があるので、結構遅いことが分かる。

ただ、これは2013年につくったものなので、最適化が甘く、ルートも良くないように見えた。

そこで今回は、実際にルートを作り直してどれぐらいのタイムになるか見てみることにした。

新たなルート案は110.10秒

このステージは登山の量がタイムに影響しやすいので、

  • 前半: 最速で登山してスライダーイン
  • 後半: 登山しながら必要分のコインを回収

というルートが良いと考えた。

実際に作った参考TASは以下で、

簡単な流れは以下となっている。

(1) てっぺんスターと同じ感じで登山し、スライダーに入る。

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(2) スライダーを滑る。(全コイン回収)

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(3) スライダー終了後、現行の100赤ルートと同じように進む。

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(4) (普段で言う)5枚目の赤コインは取らず、現行の100赤ルートと同じように進む。

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(5) てっぺんに登ってサルをつかむ。

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(6) サルバグ後、橋の上の5枚列&下の橋の5枚列を回収しつつ、スターキャンセル

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(7) 100枚スター+サルスターを回収して終わり。

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以上の過程から、タイムは110.10秒となった。

先の動画には2つのルート案が紹介されているのだが、両者とも同じぐらいのタイムなので片方は割愛する。

103.80秒を比べて、ルート案のほうが6.3秒遅いので、2019年の最適化・ルート構成力でも、実用化には程遠いということが分かる。

なぜ無駄な登山をしているのか

新たなルート案を見て、人によってはこう思ったのではないだろうか。

「スライダーに入る前にサルスターを出現させてしまえば、スライダー後にてっぺんまで登らずに済むのでは?」

たしかにその通りで、スライダーに入る前にサルスターを出現できれば、登山量がかなり減る上、山をグルグル回らずに済むので、タイムが速くなるはずだ。

でも、実はこの『スライダー前サルスター出現ルート』は、ある仕様のせいで、ルートとして成立させることができないのだ。

その仕様とは、『スライダーに入るとサルスターが消える仕様(ケージに戻る)』である。

スライダーに入るとサルスターが消える仕様とは

赤コインスターやシークレットスターは、エリアをまたいでも出現済のスターが消えない仕様になっている。

■例1. スノーマンズランド 赤コインスター

かまくらを出入りしても、赤コインスターは消えない。

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■例2. ちびでかアイランドの赤コインスター

洞窟を出入りしても、赤コインスターは消えない。

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一方で、サルスターは、エリアをまたぐ(スライダーに入る)と出現済のスターが消える仕様となっている。

(この仕様は、箱の中に入っているスターやノコノコレーススターなどでも同様である。)

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この仕様のせいで『スライダー前サルスター出現ルート』ができないのである。

幻の『スライダー前サルスター出現ルート』を作ってみた

とはいっても、ここまで記事を読んできた人なら、

「何としてでもスライダー前サルスター出現ルートのタイムを見てみたい!」

と思っているはずだ。

私も全く同じことを思ったので、スターの位置を少しいじり、幻の『スライダー前サルスター出現ルート』を作ってみることにした。

ルートを考えた時の話は割愛するが、100枚赤の現行ルートを少し変えた感じのルートとなった。

100枚赤の現行ルートと大きく異なる点は以下2つ。

(1) サルバグ後、5枚列×2を回収してスライダーに入る。

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(2) スライダー終了後、風に乗り、橋の5枚とヘイホー2枚を回収する。

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最終的なタイムは……、104.70秒!

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このタイムで比較したのが以下で、100枚サルのほうが1秒弱遅い結果となった。

組合せ 総合タイム 100枚+α 単体
100枚赤+サル 126.50秒 92.80秒 33.70秒
100枚サル+赤 127.40秒 104.70秒 22.70秒

この結果だけを見ると「やっぱり使えないのでは」と思うかもしれないが、実はそんなことはない。

その理由は、(100枚赤側の)サル単体の33.70秒というのが、あまりにも速すぎるからだ。

このタイムは、『インスタクリップ』&『丸太最速壁キック』という高難易度のテクニックを決めてようやく出るタイムで、実際のRTAだと数秒単位で遅くなる。

なので、RTAの通しレベルでは、同じぐらいの総合タイムになるか、もしくは100枚サルのほうが速い結果になると考えられる。

また、100枚サルを採用すると、丸太パートでミスして落下する可能性を1回分減らすことができるので、安定性という観点から見ても良いルートなのではないだろうか。

むすび

今回は、仕様さえ違えば実用化される可能性のあった『幻の100サルルート』を紹介した。

こういう話は、あくまで『もしも話』でしかないので、RTAでは意味のないことだ。

ただ、マリオ64を楽しむ上では、なかなか面白い話なのではないかと私は思っている。

今後も、面白い『もしも話』を見つけたら、記事を書くかもしれない。